もう2-30年前になるのだろうか、荻窪の丸福に出会ったのは。
荻窪北口のバスターミナルのすぐそばに木造の建屋でやっていた。
単純な醤油スープだけれど、魚介系はなしの、それでも深い味わい深いスープだった。
麺も歯切れのよい細麺。ある意味東京ラーメンの代表選手だったかも知れない。いわゆる元祖行列の出来るラーメン屋であった。
味は嫌みのない醤油味で、しかし奥深く、一番最後の仕上げにほんのちょっとかけてくれる、煮卵の汁も香ばしくてよかった。
何度となく通った丸福。あるときぷっつりと営業をやめていた。
写真週刊誌にもとりだたされた、脱税事件のせいだと風の噂に聞いた。
何ヶ月かすると、今度は少し阿佐ヶ谷よりに新しい店舗を構えてまた出直したようだった。
相変わらずの無愛想な親父は几帳面に麺を茹でていた。
その頃になると、住宅街から表通りに出てきた春木屋も同じ通りに軒を並べるようになり
両方とも行列店となった。同じ醤油スープでの勝負だったが、私は丸福に軍配を揚げていた。
そして時は経ち、ふと気がつくと、数年前にまた何の前触れもなく、移転や閉店の張り紙など一切なく
また店を閉じてしまった。コレも噂によると
資金繰り云々という。
店の売り上げは始終行列が出来るほどなので、決して悪いはずもなく、株か先物で穴を開けたか
はたまた博打の大損か。
またいつかどこかで、ひっそりと店と再開してくれないかと,淡い夢を見ている。
昔からここの兄弟店は存在していた。すぐ近所の荻窪店とその支店の西荻店。
本当の兄弟か暖簾分けかは窺い知れないが、どうも仲は極めてよろしくない印象だった。
何回か兄弟店で食べ比べてみたものの、本店の足下にも及ばない味だった。
今回も西荻にある傍系のその
「西荻店」にふらりと行ってみた。
見た目は今は無き本店と同じなのだが、麺が全然違っていた。
抵抗感のない、つるつる麺である。少し渋みのあるスープは極めて似ていたが、浮いている油は
コレは全然似ても似つかぬ、個人的には受け入れがたい味がした。
見た目が極めて似ていただけに、残念の大きな二文字を背負いながら店を出た。
玉子そば@700円
このそぼろが入った煮卵の汁は多すぎだ
ちょっと煮過ぎた感じはオリジナルに近いが、ツルツル過ぎである
好感の持てる店構え